Engineering Skills

製品開発エンジニアがデータ解析のノウハウを垂れ流します

Doehlert計画

最適化計画の中で、Doehlert計画というものがあります。マイナーです。類似手法の中心複合計画やBox-Benken計画と比較してみます。

Doehlert計画

Doehlert計画はモデル式として多項式二次など曲面性を仮定して最適化を行う実験計画法(Design of Experiment, DOE)の一種です。同様なDOEのうち代表的なものに中心複合計画(CCD)やBox-Benken計画(BBD)などがあります。

3因子実験で中心複合計画, Box-Benken計画, Doehlert計画(DD)を比較したものが下記です。実験回数としては中心複合計画>Box-Benken計画>Doehlert計画となっており、効率的に曲面性の推定を行う事ができます。ただし、実験回数を少なくすることは効率性と引き換えに検出精度を低下させます。実験誤差と比較して影響の小さい効果は有意とならない恐れがあります。

中心複合計画の星点はマゼンタにしています。さらにDoehlert計画の第一変数x=0の場合もマゼンタに色付けしてあります、主に見やすさのためです。

f:id:OceanOne:20210606013550p:plainf:id:OceanOne:20210606013609p:plainf:id:OceanOne:20210606013627p:plainf:id:OceanOne:20210606013729p:plain

実験回数の比較

中心複合計画, Box-Benken計画, Doehlert計画について、要因数毎の実験回数を比較します。各実験計画の実験回数は中心点の実験回数を[math] \displaystyle C_0 [/math]、要因数を[math] \displaystyle k [/math]とすると

中心複合計画:[math] \displaystyle 2^k + 2k + C_0 [/math]

Box-Benken計画:[math] \displaystyle 2k(k-1) + C_0 [/math]

Doehlert計画:[math] \displaystyle k^2+k + C_0 [/math]

と、上記のようになります。

簡単のため、中心点の実験回数は1回として各手法の実験回数を下表で比較します。各手法毎に特徴的なパラメータがありますが、手法間の比較ではtotalの列を見てください。Doehlert計画はいくつかの要因数ではBox-Benken計画と同等で、基本的には最小の実験回数であることが分かります。

f:id:OceanOne:20210606235012p:plain:w700

FDS/VDG plotでの比較

Fraction of Design Space (FDS) plotは縦軸に予測誤差、横軸に予測誤差以下になる領域の実験領域内における割合を取ったもので、Variance Dispersion Graph(VDG) plotは縦軸に予測誤差、横軸に中心からの距離を取ったものです。

中心複合計画, Box-Benken計画, Doehlert計画について要因数3、中心点の実験回数3でFDS/VDG plotでの比較したものが下記です。実験回数が少ない影響で実験領域について中心点から実験領域端部までの距離の3割以上離れると予測誤差が大きくなることがわかります。実験回数が少ないのは魅力なので、この傾向を把握した上で適用したいですね。

f:id:OceanOne:20210608005125p:plain
FDS plot
f:id:OceanOne:20210608005153p:plain
VDG plot

まとめ

Doehlert計画と中心複合計画、Box-Benken計画と比較しました。今回も、こちらのツールに実装しています。メニューバーからDOE>Make Doehlert design fileで計画を作成できます。