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実験計画法(1)-因子と要因

エンジニアの作法として大まかに実験ベースと理論ベースに基づく立場があります。前者で理論を無視するとデータ解析で理論的にありえない回帰直線を引いたり、後者で実験のバラツキを無視すると本来ないはずの効果を議論したりしてしまいます。どう考えても両者は固く結びついているので偏った立場は危険だと思います(私が言及するまでもなく昔から言われていることです)。今回から実験計画法についても書いていきたいと思います。

因子

実験を行う上で変更できるものを因子(factor)と呼びます。そして因子が取りうる値を水準(level)と呼び、連続値であったり、離散値、あるいは大小比較できない名義尺度であったりします。

実験を行う場合に、因子を3種類変化させる場合は3水準の実験を行うと言います。この語句にも意味があると思います、この実験は何水準と聞けば明確に答えが返ってくるので時短になりますし、質問の意図も明確に伝わります。


次に因子の種類について説明します。因子の最適水準を指定することが可能なものを母数因子、そうでないものを変量因子と呼びます。

母数因子のうち最適水準を決定することに意味のある因子が制御因子、最適水準を決定することに意味のない因子が標示因子です。

変量因子のうち代表的なものがブロック因子です。

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制御因子(Control Factor)

最適解を決定するためのパラメータです。通常、実験計画で割りつけられる因子です。実験者が自由に決められるものです。

下図のように出力特性に影響を与え、大きい方が良いとか、小さい方が良いとか、決められるものです。

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標示因子(Control Factor)

母数因子のうち実験結果には影響を与えるが、最適水準を決めることに意味がないパラメータです。簡単に言うと実験を行う上では考慮すべきだけど、実際は管理できない因子の事です。

例えば製品の動作保証範囲などを考えると下限、上限の特性を実験により取得することは必要ですが、実際には管理することはできず保証範囲内で所望の特性値を出力する必要があります。

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ブロック因子(Control Factor)

変量因子のうち実験結果には影響を与えるが、最適水準を決めることに意味がないパラメータです。実験計画法を行う上では局所管理を行うためのパラメータとなります。実験の精度を高める上ではとても重要です。

例えば、実験場所、実験者、実験装置などで、効果の推定結果が変わるようなパラメータです。事前にわかっている場合にはブロック因子として実験計画に組み込むと推定精度が上がります。

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誤差因子(Noise/Error Factor)

実験計画で想定される因子のうち、管理できないランダムな影響因子です。

ただし、これは統計的な揺らぎの場合もありますし、現状管理できていないだけで要因が判明すれば母数因子あるいは変量因子になりうる根本原因がある場合もあります。誤差因子には未解明な因子も含まれると考えるべきです。

誤差要因については実験前に解析を行い、変動要因を抑えておくと実験精度が上がります。場合によっては制御因子に転化することも出来ます。

まとめ

実験計画法についても書き綴ってみようと思い、まずは因子の種類について紹介しました。ただの用語説明ですが、ご自身が立ち向かっている問題について、影響因子を上記のように分類するだけでも現象理解に役立つのではないかと思います。