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Iman-Davenport検定

Friedman検定修正版のIman-Davenport(イマン・ダベンポート)検定です。

Iman-Davenport(イマン・ダベンポート)検定

Friedman検定はノンパラメトリック検定で、対応のある2群以上の多群の差を検定する手法です。Friedman検定の特徴として保守的である(=有意差が出にくい)という問題があり、修正版のIman-Davenport検定[1]が提案されています。

Iman-Davenport検定の計算方法

Friedman検定では対応するデータ集合に対して順位付けを行い、この順位を各郡ごとに足して。[math] \displaystyle R_i [/math]を計算、データ総数を[math] \displaystyle N [/math]、水準数を[math] \displaystyle k [/math]として、検定統計量[math] \displaystyle {{\chi}_{0}}^{2} [/math]は下記でした。

[math] \displaystyle {{\chi}_{0}}^{2} =\frac {12}{nk(k+1)} \sum_{i=1}^{k}{ {R_i}^2 } - 3n(k+1) [/math]

Iman-Davenport検定では、この[math] \displaystyle {{\chi}_{0}}^{2} [/math]を変形して、

[math] \displaystyle {{F}_{F}} =\frac {(n-1){{\chi}_{0}}^{2}} {n(k-1) - {{\chi}_{0}}^{2} } [/math]

この[math] \displaystyle {{F}_{F}} [/math]が自由度[math] \displaystyle ((n-1),(n-1)(k-1)) [/math][math] \displaystyle F [/math]分布に従う事からP値を計算します。

Iman-Davenport検定と他手法の比較

やはり自分で体感するのが一番良いと思うので、比較してみます。2元配置ANOVA、Friedman検定、Imna-Davenport検定について、6水準x4水準の2元配置完全実施計画の検定をしてみます。基本的に応答は0、1因子目の水準1番目のみ応答は1にして、これに標準偏差1の正規乱数を加え検定した結果が下記です。1000回試行で、下記ではP値の正規確率プロットを図示しています。


まず変動を含んでいる第1因子の結果が下記です。特に外れ値も含んだデータでもないので、ANOVAの方が有意水準が出やすくなっています。

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Fig.1-(a) (変動を含む)第1因子

上記の横軸0~0.2を拡大したものが下記です。よく見るとP値~0.2以下程度の領域で、Iman-Davenport検定がFriedman検定よりP値が小さく有意差が出やすくなっており、ANOVAに漸近しているように見えます。これがFriedman検定が保守的言われ、Iman-Davenport検定が補正している効果のようです。

また、Fig.1-(a)に戻るとP値が非常に大きい領域では逆にIman-Davenport検定がFriedman検定よりP値が大きくなっています。ただし、後者の逆転領域はどのみち有意でないと扱う領域なので興味の対象外ではあります。

f:id:OceanOne:20210814044309p:plain
Fig.1-(b) (変動を含む)第1因子[拡大図]

また変動を含んでいない第2因子の結果も下記に示しておきます。実験内容より本来は有意差はないのですが、Iman-Davenport検定がANOVAより有意差を誤検出しやすいようです。この辺りはトレードオフなのでしょうが、有意水準を取りこぼしたくない技術者観点で言えば目くじら立てる必要もなく再試すれば良いと思います。

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Fig.2-(a) (変動を含まない)第2因子
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Fig.2-(b) (変動を含まない)第2因子[拡大図]

まとめ

Iman-Davenport検定の計算方法について述べました。今回も、こちらのツールに実装しています。メニューバーからDOE>Make DOE fileで解析対象ファイル作成、応答を入力してDOE>Analyze DOE fileで解析、ANOVA/Friednman検定と同時にIman-Davenport検定の結果も出力します。

[1] Iman, R.L., Davenport, J.M., Approximations of the critical region of the Friedman statistic, Communications in Statistics, Vol. 18, 1980, pp. 571-59